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光の帝国 常野物語(著者:恩田陸)の感想

「光の帝国 常野物語」を読みました。

光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

 

 この小説は、連作短編小説です。内容は、常野という特殊な能力を持つ一族のお話です。常野は、日本各地に点在していて各々生活しています。常野の能力は、一口に説明できないので、ここでは説明を省きます。常野は、それぞれの能力と向き合いますが、戦時中はその能力に目をつけられ国に追われ、戦後も日常に馴染めずに悩みを抱えています。そんな常野は、互いに助け合うことで生きていきます。自分の意志と関係なく常野として生まれたことは、変えることはできません。だからこそ、常野は助けあうのです。

中盤までは、常野の説明で淡々としたお話なので退屈ですが、終盤になるに連れ物語が大きく動き出し、常野が一概に現実離れ存在ではないことに気づきます。常野の能力とその役割は現実離れしているが、能力と役割を自覚し理不尽な現実に悩むのは当たり前のことで、誰もが経験することだと思います。常野は、助け合うことでそれを克服します。

常野がそうであったように私たちも日々の生活で待ち受ける理不尽を助け合うことで克服いていくという当たり前のことをこの現実離れしているように思えたこの小説から再認識させられました。

恩田陸さんの小説は、「夜のピクニック」、「ネバーランド」を既に読んでいました。どちらも高校生の青春を描いた本作とは全く毛色の違う小説でした。そのため、本作を読み始めたときは、期待していたものと違ったので少しがっかりしてしまいましたが、最後には読んだ二作品と同様に温かい気持ちになりました。常野物語は、まだ二作あるみたいなのでまた今度読みたいです。